ストーキング74

 

 

 

 

 急展開するジンの話についていこうと必死に聞入っていた。

 それはルージュも同じはず。

 

 そしていきなり自分の名前を呼ばれた彼女は、『会長秘書から提示された条件』の内容を聞かされた。

   

 

 

 『ネテロ会長を見つけ出し、魔女の若返り薬を手渡す』

 

 

 

 彼女が必死で・・・命がけで追い求めてきた長老と魔女の秘薬シリーズ、

 その中の『若返り薬』が条件に組み込まれていたんだ。

 

 ルージュはきょとんとしたまま椅子に座っている。

 

 多分、状況が飲み込めてないんだ。

 俺も同じだけど・・・。

 

 「・・・ちょっと、

  なんで?

  なんで魔女の若返り薬なのよ?

 

 そうだ・・・なぜだ?

 

 

 『ネテロの爺さんはハンター協会会長であり、

  かつ、世界最強レベルの念能力者でもある。

  

  年老いた今でも爺さんとタイマンはって勝てるやつはほとんど存在しないと言っていい。

  戦ってみないとわからないが、俺だって危うい。

 

 「そ、そんなに強いんですか?」

 

 『経験が半端じゃないんだ。

  爺さんのレベルになると、どんな念能力にでも即時に対応し攻略法を見出すことができる。

  衰えた身体能力を補って余りある経験値・・・それが爺さんの強さだ。

  

  だがそれも相手の戦闘能力次第。

  いくら経験値が高くても基礎能力で大きく差をつけられれば正直キツイ。

 

 

 「だから魔女の若返り薬ってわけ?

  基礎能力を復活させるってこと?」

 

 『そういうことだ。

  爺さんの計画通りに進めながら戦力を大幅に増幅させるには一番合理的な方法だ。

  俺も人から聞いた話だけで実際に見たことないけどな、

  全盛期のネテロの爺さんの強さはハンパじゃなかったらしい。

 

 「まぁ今のじじいであの強さだからな。

  全盛期の戦闘能力・・・想像しただけで震えるねー。相当なバケモンだろうよ。

 

  

  だけどよ・・・じじいは飲むかね?

 

 

 『飲まないわね。

 

 『そうね、100%飲まないわ。

  あの頑固な会長は。

 

 『そうか?

  手元に若返り薬があって戦闘に負けそうだったら、、

  爺さんなら飲むと思うな、俺は。

  『世界の平和』と『自分の信念』・・・どちらを優先させるか・・・爺さんは自分を折る。

 

 

 「ジンはネテロを買被りすぎですよ。

 

 面白くなさそうな顔でつぶやくリスト・・・よほど大きな何かが過去にあったんだろうな、ハンター協会と。

 

 

 『さて、

  今度は俺達ルーラー側から、ルージュとルルーペに交換条件を提示する番だ。

 

 「か〜、

  条件条件・・・めんどうくせぇぇ。

 

 「? 僕達から条件?

  

 『まずルージュ。

  はっきり言うとだな、魔女と長老の秘薬の所有権はまだ俺達ルーラー側にある。

  つまり若返り薬の使い方で君にとやかく言われる筋合いは無いってことだ。

 

 「・・・そのとおりだ。

  レイザーに阻止され、私は魔女と長老の秘薬のオリジナルアイテムを手に入れることができなかった。

  だから今の私には口出しする資格はない。

 

 ひざの上で握るこぶしの硬さでルージュの思いが痛いほど伝わってくる。

 

 『ただ、

  これからネテロの爺さんに届ける途中で君に狙われ奪われれば、会長秘書の条件を達成できなくなってしまう。

  それは避けたい。

  そこでだ、

  君に俺達ルーラーから交換条件を提示する。

  

  若返り薬以外の魔女と長老の秘薬のオリジナルをすべて君にあげよう、そのかわり若返り薬はあきらめてもらう。

 

 

 「え?

 

 

 『ふふ、

  相変わらず素直じゃないわね。

 『うるせー

 

 ルージュと目が合ったリストが笑って言った。

 「ね、肝心なところで人がいいから憎めないんですよ、ジンは。

 

 『まぁすぐに回答しなくていい。考えておいてくれ。

 

  そしてルルーペ、

  君にも交換条件を提示しよう。

 

 「え!!?

  お俺!?

  だって? え? 話の流れからしても関係ないじゃん!」

 

 『そう、関係ないのも申し訳ないと思ってな。

  ルルーペ、

  ネテロの爺さんに若返り薬を届ける役を引き受けてくれないか?

  そのかわり好きな指定ポケットカードをひとつやるよ。もちろん外界へ持ち出し可能なオリジナルだ。

  

 「む、

  無理っすよ。いや無茶っすよ!

  俺、ハッキリ言ってめちゃくちゃ弱いですよ!」

 

 『ああ、知ってる。

  だが潜入と情報収集のスペシャリストだろ?

 

 「ふっふっふ、なるほど。

  確かにルルーペの念能力は今回の任務に最適だな。

  面白い。

 

 「あのレイザーに気付かれずに尾行してたくらいですしね。

 

 『確かに・・・彼の念能力ならキメラアントに気付かれずに会長を探索できるわね。

  会長の計画を引っかき回さずに済むわ。

 イ、イータさんまで。

 

 「ちょ、ちょっと待ってよ!」

 

 『俺達ルーラーで手が開いてるやつがいないんだよ。

  グリードアイランドを停止させるなら別だけどな。

  それに俺達がNGLに入ると目立ち過ぎる。

 

  まぁ今すぐ回答しろとは言わない。

  一日、ルージュと一緒に考えてくれ。

  明日のこの時間、君達の答えを聞く。

 

 

 『じゃみなさん、とりあえず結論は明日ってことで・・・よろしいですね?

 

  では、

 

  会議(ミーティング)を終了します!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ピンポンパンポーン

 

 システムメンテナンスが終了しました。

 これよりスペルカードの使用が通常通り可能になります。

 ご迷惑をおかけ致しました。

 引き続きグリードアイランドをお楽しみください。

 

 ピンポンパンポーン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「じゃ、僕達は1階の部屋に居ますから、何かあったら声をかけて下さい。

 

 「のるもそるもお前達次第だ。

 ひと呼吸おいてドゥーンは続ける。

 「これは俺の持論だけどな、

  よーく考えて、それでもわかんなかったら面白そうな方を選んどけ。

  そうすりゃ後悔することはないからよ。

 

 ドアの前で待つリストの方へ、ふらふらとドゥーンは歩いていく。

 

 「ふはぁ、さて寝るか。

 「またですか? ホントよく飽きませんよね。

 「寝るに飽きるもないだろ。

 

 足音と共に喋り声も小さくなっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 また広い部屋にルージュとふたりきり。

 

 

 

 さっきまでの騒がしさが嘘みたいに静かだ。

  

 

 

 

 「なんか台風の後みたいだね。」

 

 「・・・。

 

 

 「ルージュ?」

 

 「ん?

  あぁ、ゴメン。 何?

 

 「・・・いや、なんでもない。

  

  ルージュは?

  ジンの交換条件、受けるの?」

 

 

 「さあね、

  ちょっと考えてみるけど・・・

  すべて手に戻ってくる、こんなチャンス二度とないだろうし。

 

 「でも、魔女の若返り薬は戻ってこないよ。

  二度と。」

 

 「・・・私はね、正しく使われるならなくなってもいいのよ。

  そもそも念具も道具、道具は使われるために存在する。

  私の祖母は人のため念具を作った。

  世界平和のために使われるなら、、、死んだ祖母も笑ってくれるわ。

 

 「じゃぁ考えるまでもないか・・・」

 

 「ただね、

  入手方法が気に入らない。

  盗むならまだしも・・・貰うっていうのが・・・気持ち悪い。

 

 (;´Д`)

 ハンターだ、根っからの。

 

 

 「あんたは? どうするの?

  言っとくけどさ、ネテロ会長が直々に動いてるってことは相当ヤバイわよ。

 

 「やっぱり?」

 

 

 「でも、指定ポケットのオリジナルを手に入れるのはこれが最後のチャンスだと思うけどね。

 

 「だよね・・・

  ひとつしか貰えないけど、ゼロよりは断然いいし・・・

  若返り薬を届ける口実でグリードアイランドから脱出もできるし・・・

  途中で任務投げ出して逃げることだって可能なんだから。」

 

 「心にもないこと言うな、レイザー助ける気まんまんのくせに。

  ホントは決意固まってんでしょ?

  

 

  そうだ!

  まだ聞いてなかったね。

  あんたの狙ってた指定ポケットアイテムって何?

 

 「う!!」

 

 

 ヤバイ。。。

 

 

 「何だその顔・・・、

  言っとくけど、もう秘密はナシだぞ。

  私だって話したんだからな。

 

 

 しまった。

 

 

 言いわけ、考えてなかったぞ。

 

 

 ・・・、

 

 

 いや、

 

 ・・ルージュは命を賭けて戦った仲間だし、嘘はつきたくない。

 

 

 よし。

 

 腹くくってゲロするか(;´ー`)

 

 

 

 

 「わかった! 正直に言うよ!

 

  今から言うことはホントだからな!!

 

 

  いいか! 聞いて驚くな!!

 

  

 

  10  黄金るるぶ

  21  スケルトンメガネ

  64  魔女の媚薬

  71  マッド博士のフェロモン剤

 

 

 

  これが俺の目的だ!!」

 

 

 

 「

 

 

 

 へ、へへ、言ったぞ!!

 

 

 な、

 

 なんか、快感(*´ー`)

 

 

 「・・・本気で言ってんの?

 目を丸くするルージュ。

 

 あ、あぁぁ

 こ、これは・・・!

 なんだこの感じは!

 

 か、快感の新境地だ(ハァハァ(*´Д`*))

 

 

 

 「マジもマジ。

  大マジ。」

 

 「そんなことのために命賭けてたのか?

 

 「もちろん!(o^ー')b」

 

 

 「・・・ぷ、

  

  くっくっく、ははは、

  あはははっはははははっ!!

  く、くだらない、・・・ふ、

  あんた・・・ふふ、最高だよ。

  あははは。

 

 「し、心外だなぁ・・・。

  俺にとっては命と同等の価値なのに。」

 

 「ふふふ、

  わるいわるい。

  そうだよな・・・価値観は人それぞれだし・・・ふふ。

 

  じゃぁ明日までに、ふ、その中から1つだけ選ばないと、いけないな。

  

 

 「まだジンの条件を呑むかはわからないよ。

  でもまぁ考えておかないとね。

  迷うなぁ。」

 

 「ふふ、

  ま、せいぜい一晩悩みな。

  私は隣の部屋で休むわ。

  じゃぁね。

 

 ルージュはニタニタ笑いながら、部屋から出て行った。

 

 

 そして俺はひとりになった。

 

 

 

 

 またベッドに横になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ひとりで冷静に考えていると・・・無性に不安になってくる。

 

 

 

 

 今回の任務は絶対にヤバイ。

 

 ネテロ会長が少数精鋭で向かったNGL。

 

 恐らくもうNGL全体がキメラアントの巣も同然。

 

 今回の相手は人間じゃない。

 

 尾行が上手くいくとは限らない。

 

 失敗は死に直結する。

 

 相手は動物・・・交渉の余地は無い。

 

 失敗=死。

 

 レイザーは助けたい。

 

 ホントに?

 

 俺を殺そうとしてたんだぞ。

 

 いや、それがゲームマスターとしての役目だった。

 

 それに、

 

 レイザーは俺を認めてくれた。

 

 今まで消えて尾行するだけで危なくなったら逃げ回っていた俺を、

 

 ひとりの敵として認めてくれた。

 

 ジンとその仲間達も・・・俺を必要としてくれてる。

 

 すごく嬉しい。

 

 そう、

 

 嬉しい。

 

 逃げるわけには・・・いかない。

 

 

 

・・・そうだ・・・

 

 

 

 ここで逃げたら一生後悔する。

 

 

 

・・・行け・・・

 

 

 

 行こう! 次の世界に!

 

 

  

 

 

 

 

 

   next  ストーキング75「ルルーペの提案」の巻 絶対見ろよな!ъ( ゚ー^)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ストーキング75

 

 

 

 

 

 

 『約束の時間だ。

 

  ルージュ、ルルーペ、

  答えを聞かせてもらおう。』 

 

 

 

 昨日と同じ俺の部屋に、ルージュ、リスト、ドゥーンの同じメンバー。

 そして会議(ミーティング)参加者はジン、エレナ、イータ・・・そしてまだ声も聞いていないけど他のゲームマスターも聞いているはず。

 

 

 「私は

 ルージュは少し顔を上げ空中に向かって話しだす。

 「あんた達の交換条件を受けることにした!

 

  若返り薬は戻らないが、正しく使われるならそれでいい。

 

 『そうか。

 

 「とか言っといて、届ける途中に盗みにきたりしてな。

 ドゥーンがリストに小声で話しかける。

 

 「私は約束は守る。

 

 「あぁ、この人の言うこと本気にしないで下さいね。

  大半ノリで喋ってますから。

 

 ルージュはフっと口元に笑いを浮かべた。

 「わかってる。

 

 ホント、笑える。

 リストとドゥーンいいコンビだ。

 2人とも精神的に不安定な一面があるけど、ハメを外したり不安定になったりする部分がハッキリとずれてて、

 どちらかが常に冷静でコントロールしてる。

 

 

 『さて、

  次はルルーペの答えを聞かせてもらおう。

 

 

 「俺は・・・

 

  受けるよ、その任務。」

 

 「ふっふっふ、

  そうこなくちゃな。

 

 「でも、こっちからも条件を提示させてもらう。」

 

 

 『・・・ほう・・

 

  おもしろい。

  アイテム1つじゃ不満か?

  言ってみろよ。

 

 

 「グリードアイランド・・・

  ゴン達がクリアしてしまったけど、

  魔女と長老の秘薬もなくなってしまうけど・・・

 

 

  続けてくれないかな。

  

  新しい指定ポケットアイテムを付け加えて、

  新イベントを追加したりして・・・さ。」

 

 「」「

 

 「どうしたのよ?

 

 「いや、

  グリードアイランドは素晴らしいゲームだし、

  島中歩き回ってわかったんだけど、

  もうすでにこの世界はいろんなプレイヤーの生活の一部になってて、

  無くなったら困る人がいっぱいいるんだよ。」

 

 『・・・

  

  俺は立上げだけ関わって、今はまかせっきりだからな・・・

  他のルーラー達の判断に任せる。

 

 「俺はいいぜ。

  結構居心地いいからよ、ここ。

  実はちょくちょく抜け出して、外界でぶらぶらしてるしな。

 

 「僕もいいですよ。

  プログラム作れる環境があればグリードアイランドも外界も同じことですから。

  一番負荷がかかってるのは・・・

  エレナとイータですよね?

 

 『私は別にいいですよ。

  円のチャンネル切り替わってるときは息抜きできてるし。

 

 『そうね・・・

  でもいちいちプレイヤーの案内を私達がやらなきゃいけないのが面倒なのよね。

  たまに変に絡んでくるプレイヤーもいるしねー。

 

 「うっ!!(;´Д`)」

 

 『リスト次第よね・・・どうなの? 改善プログラムの進捗は?

 

 「・・・痛いところつきますね。

  この頃何だか忙しかったから正直あまり進んでないですけど、

  大丈夫、あとちょっとで入口と出口のナビゲーターシステムは完成しますから。

 

 『ホントに?

  じゃぁ私達もかなり自由になるわね。

 

 「自由も考えもんだぜ。

  ヒマでヒマで。

 

 『私達をあんたと一緒にしないでよ。

 

 「そうだ! リスト、

  俺とのバトルイベント追加してくれよ!

  結構簡単に辿り着けるレベルで、な!

 

 「ダメです。

  ドゥーンさんは絶対に悪乗りするからゲームイベントは任せられません。

 

 「冷たいこと言うなよ、な〜〜〜

 

 『決まりだな!

  ルルーペ、グリードアイランドは続けよう。

 

  だが、問題がひとつ・・・

  レイザーが戻るまでルーラーがひとり不在だ。

 

 「それくらいこっちで何とかしますよ。

 

 『いや、そういうことじゃなくてな。

 

 「

 

 『ルルーペ、

  お前、名前の頭文字は?

 

 「?

  『R』ですけど・・・?

  何か?」

 

 『じゃ、決定だ。

  今回の任務が成功してレイザーが戻るまで、ルルーペは俺達の仲間に入ってもらう。

  つまり、君はルーラーのひとりになる。

 

 「はぁ!?

  え? 何それ?」

 

 「ふふふ、なるほど。

  僕達と志を一つにして任務を遂行するんですから十分資格ありですね。

 

 「でもルルーペ、

  お前頭文字が『R』でよかったな。

  『L』だったら名前変えられてるところだぜ。

 

 「? 何それ?」

 

 「おっかないんですよ、ジンはw

 

 

 『ルルーペ、

  ルーラーのひとりとして、今回の任務を遂行してくれるな?

 

 「・・・。

  僕でよければ、、、光栄です。

  ありがとう。」

  

 

 『では、約束の交換条件だ。

  指定ポケットアイテムは何にする?

 

 

 

 ・・・つ、ついにこの時が来た!

 

 4アイテムは手に入れることができなかったけど、

 それでも夢のアイテムが1つ手に入る!!

 

 や、やった!!

 

 

 「一晩中考えたんだろ?

  何を選ぶんだ?

 ニタニタしながらルージュが言う。

 

 

 

 

 「俺の選ぶアイテムは・・・」

 

 

 

 

 

・・・お前の選ぶアイテムは・・・

 

 

 

 

 

 「指定ポケットアイテム・・・

  

 

 

  021!!

 

 

  

  スケルトンメガネだ!!

 

 

 

 

 

 ・・・

 

 

 

 

 沈黙

 

 

 

 

 

 「プフ!

 ルージュが吹きだす。

 

 

 その反応を見てドゥーンが理解したようにうなづく。

 

 「いいねー、

  わかる、わかるぜ兄弟。男の夢だもんなぁ。

 

 リストもクスクス笑っている。

 

 

 

 『・・・イヤだ。

  気持ち悪い。

 イータさん!?(;´Д`)

 

 『ホント、サイテー。

 エ、エレナさん!!?(;´Д`)

 

 

 

 な、

 

 なんとでも言えーーーーーー(;TДT)!!

 

 

 

 

 『・・・やっぱりそれを選んだか・・・

 

 ?

 「? 

 

  ジン、いくらお前でもこの選択は予想してなかっただろ?

 

 『・・・ん?

  あぁそうだな。

  わるい、今のは気にするな。

 

 

 『じゃぁ彼にアイテムを渡すのは出発時でいいわね?

 

 『あぁ。

 

 「出発は明日でもいいだろ。

  病み上がりだから身体は慣らしといた方がいい。

  俺が付き合ってやる。

 

 「いや、遠慮しときます!!」 

 

 「大丈夫だって。

  別に殴りあうわけじゃなくて、リハビリみたいなもんだからよ。

 

 「みたいなもんってなんですか!?

  リハビリじゃないんですか!!?」

 

 「そうですね、軽く身体を動かして、

  念をコントロールする感覚も戻しておいたほうがいい。

  失敗は許されないですから。

  ジン、出発まで3日は見たほうがいいと思いますけど。

 

 『そうだな。

  じゃぁ、ルルーペのリハビリはリストとドゥーンに任せる。

 

 

 『では、3日後に出発ということで。』

 

 

 『ルルーペが出発する時にまた呼んでくれ。

  会長秘書には、

  【潜入のスペシャリストであるグリードアイランドのルーラーのひとりが会長のもとに向かう】と伝えておく。

 

 !?

 

 「なるほどな。

  『ルーラー』の肩書きがあるほうが説得力がある。

 

 「そこまで考えてたんですか。

  やっぱりジンには敵わないや。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして

 

 

 

 

 リストとドゥーンとルージュに見守られてリハビリが始まった。 

  

 自分の身体じゃないみたいに重たくて思い通りに動くことすらできない。

 

 1ヶ月も寝てたんだから当たり前か。

 

 

 でも、

  

 

 くふ、

 

 3日後には夢アイテム『スケルトンメガネ』が手に入る!

 

 

 想像しただけで顔がにやけてくる(*´ー`)

 

 

 へへ、

 自分が空気と同化できる上に、

 今度は服ゲフン障害物を透過してハダゴフンその奥にあるものを見ることができるんだ。

 

 

 

 えへへ

 

 

 

 

・・・また、ひとつ・・・

 

 

 

 

 えへへへへ

 

 

 

 

 

・・・お前は空気に近づいた・・・

 

 

 

 

 

 

 俺は空気に近づいた。

 

 

 

 

 

 

 

   next  ストーキング76「新たなる疑問、成立ってしまう仮説」の巻 絶対見ろよな!ъ( ゚ー^)

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ストーキング76

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 3日後。

 

 

 

 

 

 

 身体の調子はもとに戻った。

 予想通り、荒っぽいリハビリだった(;´-`)

 というかあれはリハビリだろうか?

 ボコボコと殴られまくったんだけど・・・ドゥーンは「なでてやっただけだ」とかいってるし・・・。

 

 でも成果はあった。

 

 前以上に感覚が研ぎ澄まされた感じがする。

 

 今ならベストな状態で潜入できる。

 

 

 

 出発の時間、リーメイロの城門前、

 リストとドゥーンとルージュ、他には誰もいない。

 リストから聞いたんだけど、俺はスペルカードで直接NGLに飛ばされるらしい。

 

 

 

 「なんだ、結局見送ってくれるのは同じメンバーですか。」

 

 「そういうなよ。

 「ふふふ、エレナとイータは来たくないってさ。

 

 

 『当然です。イヤよ、絶対。

 『ルージュさんも気をつけたほうがいいですよ。

 

 (;´Д`) 

 か、完全に変質者扱いだ。

 

 

 「ほら、

  約束のアイテムだ。

 

 

 お、

 

 おーーーーーーーー!!

 

 こ、これが!

 夢にまで見た、魅惑のアイテム!!

 

 

 

 スケルトンメガネ━━(゜∀゜)━(゜∀)━(  ゜)━(  )━(゜  )━(∀゜)━(゜∀゜)━━!!!

 

 

 

 

 

 「あ、ありがとう!!(TДT)」

 

 「泣くなよ、キモイな。

 

 「キモイっていうなぁ!

  冷たいなぁ、相変わらず。」

 

 「今、着けたら蹴り殺すからね。

  マジで。

 

 (;´Д`)

 

 

 「よかったですね。

  目的達成できて。

 

 「リスト、ルルーペの真の狙いは3種以上のオリジナルアイテム持ち出しだったんだぜ。

  だから目的は未達成だ。

 

 

 「あれ?

  

  そういや、あんたの本来の目的はグリードアイランドの調査じゃなかったっけ?

  

  あ、

  言っちゃまずかった?

 

 「・・・?

  

  あ、

  

  そういやグリードアイランドには情報収集のために来たんだった!

  忘れてたーーー!!(;´Д`)」

 

 「はっはっは!

  当初の目的を忘れて、いつのまにかアイテムゲットが目的になってたってか?

  でも情報収集ならクリアだな。

  ここまでグリードアイランドの裏に迫ったプレイヤーは今までに存在しない。

 

 「あ、

  でもグリードアイランドの情報は秘密にしておきますから。

  組織にも報告しませんから、ホントに。」

 

 「ふふ、焦らなくても大丈夫ですよ。

  君がハントした情報なんだから、すべて公開するのも自由です。

  ね、ジン。

 

 『あぁ、もちろん自由だ。

  ま、実証できるだけの証拠があるかは別だけどな。

 

 「・・・確かに、証拠がない。 なるほど〜、そこまで考えて作ってあるのか。

  って、

  いやいやいや、いいですよ。

  ホント、グリードアイランドの情報は秘密にしておきます。

  ロールプレイングゲームの情報はペラペラとネタバラシするもんじゃない。

  ゲーマーとしてのポリシーです。」

 

 『変なポリシーね。』 『キモチワルイ。

 

 完全に・・・嫌われたな、二人には(;´ー`)

 

 

 

 「しかしルルーペ、お前どこかの組織の一員だったんだな。

  いったいどんな組織なんだ?

  ちょっかい出さないから教えてくれよ。

 

 

 「うーん、まぁあなた達は信用できるから、

  それに喋ったところでどうなるわけでもないんだけどね。

  

  俺の属する組織の名は・・・『地下酒場』

  アンチハンター協会を掲げるサイトを運営する組織です。」

  

 

 「へー、アンチハンター協会ねー。

  いい組織ですね。

 リストは満面の笑みを浮かべる。

 

 『・・・。

 

 「でも、実は自分の組織なのによく分からないんです。

  メンバーにはほとんど会ったこともないし。

  リーダーの『マスター』にすら会ったことないんだから。」

 

 「ほー、

  確かに変わった組織だな。

 

 「でも、俺を必要としてくれているし、

  それにデータ通信という手段だけどやりとりはしてるし、テキストだけどね。

  今回グリードアイランドでもピンチの時、マスターが助けてくれたし。」

 

 「

 

  君はマスターに会ったことないんですよね。

  ってことはピンチのときのやりとりもデータ通信で?

 

 「そうですけど、何か?」

 

 「グリードアイランド内から通信したのか?

 

 「? うん、この通信端末で。」

 

 「ちょっと見せてもらっていいですか。

 

 「いいけど・・・はい。

 

  なんかその機械、

  近距離では端末同士が直接、遠距離の場合は衛星経由でデータを飛ばすって言ってましたけど。

  だからグリードアイランドからだと衛星経由だと思うんだけど。」

 

 『ありえないわ。

 

 え?

 

 「イータの言うとおり、ありえないですね。

 

 『私達の円には増幅安定装置を通す際に完全通信妨害の特性も付加されますから。』

 

 『外界とのあらゆる通信手段はすべて無効化されます。

  ね? リスト。

 

 「僕の作ったプログラムに穴はありません。

  それにもしアタックを受けたとしても、痕跡は必ず残ります。

  全く痕跡も残さず、イータやエレナに感知もされず、通過することは不可能です。

  例え念能力を用いたとしても、です。

 

 

 

 

 

 ・・・そりゃ、   そうだよな、

 

 

 ・・・なんで今まで気付かなかったんだ。

 

 

 外界とデータ通信なんかできるわけないじゃないか!

 

 なぜなら、外界からの隔離はゲームのリアリティ演出のために必要不可欠。

 ゲーム開発の際、通信の妨害はゲームマスターが最初に手をつけるステップのはずなんだ。

 ジェイトサリだって言ってたじゃないか!

 情報の通達はグリードアイランド内で相手と落合うって。

 

 

 「しかも今回のケース、発信源はルルーペなんですよね。

 

 

 「そう・・・ただ普通に送信ボタンを押しただけです。

  変な操作は一切してないよ。」

 

 

 「じゃぁ考えられるのはひとつだけ。

 

 

 「それって・・・

 

  マスターがグリードアイランドの中にいたってこと!?」

 

 「それしかないわな。

 

 「近距離通信で端末同士が繋がったってこと以外考えられないですから。

 

 『・・・なんか面白そうな展開だな。

 

 「でも・・・やっぱり、ありえない。

  グリードアイランド潜入前夜にマスターとヨークシンでデータ通信したんだから。」

 

 「ということは、

  その時点でマスターさんは外界にいたってことです。

 

 「・・・

  外界で・・・俺にグリードアイランド潜入の指令を出して・・・

  マスター本人も俺の後からグリードアイランドに入ったってこと・・・なのか?

  

  なんで?」

 

 「マスターってやつにも何か『目的』があったんじゃないか?

 

 『しかも・・・

  その『目的』はルルーペがグリードアイランドに入った方が達成する確率が高かった。

  ってとこだろうな。

  いや、もしかしたらルルーペの存在が必要不可欠だったのかもしれない。

 

 

 「なんか・・・恐いわね。

 

  あんた、心当たりないの?

 

 

 心当たり・・・

 

 

 『な、なんか燃えてきたわ! サスペンスよ! これは!

 

 『・・・エレナ、悪い癖出てるわよ。

  でも、確かに面白いわね。

 

 

 『いやな予感がするな・・・。

 

  最近ルーラーの注意がルルーペに集中していたはずだからな。

  何か異変に気付かなかったか?

 

 

 「さっき見たけど、オリジナルアイテムはすべて揃ってたぜ。

 

 「当たり前です。

  ルルーペ達が城の中にいる間も『開城』はしてないですから。

 

 『私も何も気付かなかったわよ。 イータもでしょ?

 

 『そうね、この頃ドタバタしてたからいつも以上に注意深くしてたけど、異常は無かったわ。

 

 

 「ジン、考えすぎですよ。

 

 「だいたいルルーペがオリジナルアイテムに手を出そうとしたのは誰の命令でもない、独断だろ?

  マスターってやつが、この状況を予測してグリードアイランドの情報収集を命じたとは考えられねーけどな。

 

 

 『確かにその通りだな。

  ってことは何か別の目的か・・・。

  

 

 

 

 ルルーペ、データ通信の内容で不自然な点とかなかった?

 

 

 ・・・

 

 

 ・・・データ通信の内容・・・

 

 

 

 「・・・そういえば・・」

 

 

 『なになになに?

 

 

 「俺、爆弾魔っていうプレイヤーキラーに時限爆弾をとりつけられて、

  死にそうになって、でも解除する策が思い浮かばなくて、

  で、

  マスターに助けを求めたんだけど・・・」

 

 『あの大量虐殺事件ね。

 

 

 「内容に・・・不自然な点があったんですね。

 

 

 「その時は全く違和感は感じなかった・・・

 

  目の前の危機を乗り切ることに精一杯で・・・

  

  だから、マスターの助言は本当にありがたかった。

 

  

  でも、

  

 

  今考えると・・・

  

  

 

  マスターの回答は・・・

 

 

 

 

  ・・・完璧すぎたんだ。」

 

 

 「」「」「

 『』『

 

 

 「マスターに助けを求めた時、

  時限爆弾のタイマーがどんどんカウントされていって、

  気が動転してて、

  震える手で、

  文章を入力してたんだけど、

  そんなに丁寧に状況を説明できるわけもなくて・・・

  重要な点だけを、ほとんど箇条書きで、

  並べて・・・送信したっていう状態だったんだ。」

 

 「でも、マスターの回答は細部にわたり完璧だった。

  そうなのね?

 

 「・・・うん。

  今考えると・・・おかしい。

  

  爆弾魔の能力の詳細をあらかじめ知ってないと、

  やつらの念能力が発動された状況を把握してないと・・・

  俺の送った断片的な文の羅列で、

  あんな考察ができるわけなかったんだ!」

 

 

 『と、

  鳥肌立ってきたわ。

 

 

 「あんたから爆弾魔の話、聞いたことあったけど、

  ハメ組織全員が集合した時に念爆弾が発動したんでしょ?

 

 「そう。

  対象に自分の念能力を説明することが命の音(カウントダウン)の発動条件だったからね。」

 

 「ということは、

  爆弾魔が自分の念能力を説明したのは、後にも先にもその時だけってことですね。

 

 「その時点まで誰も爆弾魔の正体に気付いてなかったわけだからなー。

  聞いたやつはすべて死亡していたってわけだ。

 

 『ということは、

  マスターは爆弾魔が自分の念能力を説明したその場所にいたことになる。

 

 「でも・・・爆弾が発動しなかった人はいなかった。」

 

 

 「簡単よ。

 

  マスター自身にも念爆弾が発動してた。

 

 

 『も、もう材料が揃ったわね。

  わかるんじゃないの?

 

 

 「整理すると・・・

  外界でルルーペに指令を出し、

  ルルーペより後にグリードアイランドに入って、

  爆弾魔の説明を聞いていた。

 

 「ルルーペに丁寧に回答してきたところを考えると、

  どうやら自分の爆弾の解除法を見つけ出していたな。

 

 『ルルーペがグリードアイランドに入ることで、自分の目的を果たせる可能性が高くなる人物。

  もしかしたらルルーペを利用しようと接触してきたことがあるかもしれない。

  

 

 

 ちょ

 

 

 

 ちょっと待ってよ

 

 

 

 

 そんな

 

 

 

 

 そんな人物

 

 

 

 

 

 ひとりしか い な い じゃ ない か

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

  

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 本当に、あんたがマスターなのか?

 

 

 

 アベンガネ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

   next  ストーキング77「『上書き』の念能力者」の巻 絶対見ろよな!ъ( ゚ー^)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ストーキング77

 

 

 

 アベンガネがマスター・・・。

  

 

 仮定して初めて気付いたけど、確かに思考の系統というか・・・どこか似ているところもある。

 

 でも、なぜ?

 

 俺に正体を明かさなかったのはなぜだ?

 

 

 ・・・もしかして、

 俺が勝手に思い込んでただけだと思ってたけど、

 爆弾魔の『命の音』(カウントダウン)の攻略は地下酒場の真のメンバーになるためのテストだった?

 

 俺はマスターに試された。

 そして俺はそれをクリアした。

 

 アベンガネは計画を実行するため、俺にコンタクトをとり青空食堂で落合った。

  

 そこで計画を説明した後で、自分の正体が『マスター』であることを明かすつもりだった・・・。

 

 だが、

 

 ヒソカが現れた。

 

 予想外の展開。

 

 ヒソカはアベンガネに団長の除念の仕事をもちかける。

 

 アベンガネ、いやマスターにとっては好都合だ。

 

 成功報酬500億以上の金が手に入り、幻影旅団に接近し旅団の情報を探ることができる。

 

 俺の正体がクロロ=ルシルフルにバレてしまいあきらめざるを得なくなった、旅団の調査を再開できる絶好のチャンス。

 

 マスターならこのチャンスを逃すようなことはしない。

 

 でも、

 

 ・・・。

 

 やはり何かひっかかる。

 

 

 

 ・・・。

 

 とにかく、

 

 現時点では、『アベンガネ = マスター』だ。

 

 状況証拠が揃いすぎてる。

 

 だが納得のいかない点があるのも事実。

 

 

 アベンガネに会おう。

 

 会って確かめるんだ!

 

 今回の任務をクリアした後なら、団長の除念も終了して旅団から離れているはず。

 

 

 「マスターの正体、どうやら心当たりがあるみたいだな。

 

 

 「・・・うん。

  だけど確証が取れるまで誰にも教えたくない。」

 

 『ケチね。

  教えてくれてもいいじゃない。

 

 「ま、僕達が深入りすべき問題ではないですからね。

 

 『・・・、

  そうだな、大分話がそれた。

  イータ、これからのことをルルーペに説明してやってくれ。

 

 『了解。

 

  もう聞いているかもしれないんですけど、ルルーペさんをNGLへ直接飛ばします。

  今ジンと話している要領で、円を解除してスペルの領域を全世界に広げます。

 

 「?

  外界の主要都市へも飛べるの?」

 

 『いいえ、外界の場所へ直接飛べるのは約50の主要な港だけ。

  その中にNGL近隣の港は含まれていないわ。

 

 「ということは、人?」

 

 『そうです。

 

 「ってことは、その人は昔グリードアイランドにプレイヤー登録したことがある人ですよね?」

 

 『今回のキメラアント発生の第一通報パーティのリーダー、

  名前はカイト。

 

 「ジンの弟子だ。

 

 『俺は弟子はとらねー。

 

 「似たようなもんでしょw

 

 『私とエレナの能力で、

  領域解除してある状態であればマーキング済みの人物の元へ移動させることができます。

 

 「で、でも大丈夫かな?

  いきなり飛んできたら怪しくない?」

 

 『カイトに会ったら、状況を説明してくれ。

  人の話も聞かずに攻撃をしかけるような男じゃない。

  ルルーペをサポートしてくれるはずだ。

 

 「最初からカイトに交信(コンタクト)して説明した方が話が早いんじゃないの?

 

 あ、

 さすがルージュ。するどいな。

 

 『確かにそうね。

 

 『ジン、カイトくんと話する?

 

 『・・・いやだ。

 

 「フフ、変なところでシャイなのは相変わらずですか。

 

 『よし、ルルーペ、今から飛ばすぞ!

  何か言い残すことはあるか?

 

 「やめて下さいよ、縁起でもない(;´Д`)

 

  あ、そうだ。

  ひとつだけ確認。

  グリードアイランドの継続、お願いしますね。」

 

 「おう! まかしとけ。

 

 「随分こだわりますね。

  無くなったら困るプレイヤーがそんなにいるとは思えないんだけどなぁ。

 

 「いえいえ、いっぱいいますよ。

  中にはゲームキャラと結婚してしまった人もいるんだから。」

 

 『うえ〜、そのプレイヤーって妄想で結婚してるの?

  濃いわ。すごい世界ね。

 

 「違うよ。

  互いに夫婦として認識しあって、普通に結婚生活を送ってる。

  一部のプレイヤーの間じゃ有名な話ですよ。」

 

 「ほんとかよ!?

  ・・・しかし、、、なぁ、リスト。

 

 「考えられない。

  具現化して作り出したキャラですよ。

  一定のプログラムの上でしか行動できないようになっています。

  

  システムにエラーも出てないですし。

 

 「やっぱりそうですか。」

 

 「・・・? やっぱり?

 

 「この世界をプレイしてきてわかったけど、

  ゲームキャラを操作することなんて不可能だし、

  もし操作系念能力者が操作しようとしたら、間違いなくあなた達に阻止される。」

 

 『その通りです。

  ゲームキャラに不具合があれば、すべてこちらで察知できるようになっています。

 

 「いかに操作系念能力に優れていようと、神字の知識に長けてないと僕のプログラムは外せない。

  ゲームキャラと結婚なんて・・・ホントなんですか?

  全く信じられない。

 

 「多分、そういう念能力なんです。

  いや恐らく本人は、それが自分の念能力ということにすら気付いていないと思う。

  ここからは『ある町の酒場』で人伝いに聞いた話ですけど、

  

  ゲームキャラに一目惚れ。

  彼は純粋に恋をして、

  でも、、、彼女はプログラム上を動くだけのそっけない素振り、

  なんとか、なんとか振り向かせたくて、

  毎日毎日試行錯誤、

  花をプレゼントしても・・・無反応、

  手紙を書いても・・・無反応、

  雨の日でも会いに行った・・・

  反応してくれなくても彼は必死で話し掛けた・・・

 

  それでも彼女は・・・無反応。

 

  当たり前ですよね、ゲームキャラなんだから。

 

  でも

  彼はあきらめなかった。

  

  毎日毎日一方的に喋り続けた。

  

  それだけでも彼は幸せだった。

 

  そしてある日、」

 「奇跡は起こった・・・か。

 

 「一言だけ・・・彼女は反応した。

  彼に言ったんです。

  『ありがとう』 って。

 

  それからは彼女は徐々に彼と会話できるようになっていった。」

 

 

 「長い時間をかけて、ゲームキャラのプログラムを侵食・・・

  外から操作するという方法を取らずに・・・

  神字プログラム自体を改竄・・・ゆっくりと・・・新プログラムを上書き・・・

 

 「それが本当だとしたら、とんでもねー能力者だぞ。

 

 「でも本人には念能力を発動しているという自覚は無い。

  俺が言うのもなんだけど、戦闘力はゴミレベル。

  性格も姑息、逆境に立たされると打開策を考えることをせず、ただひたすら相手に媚を売るタイプ。

  

  グリードアイランドへ入れたのが奇跡としか言いようがないプレイヤー。

  

  でも、

  彼の、彼女への思いはとてつもなく強かった。

  念能力の習得は、意志の強さや趣味趣向によって大きく影響を受ける。

  

  

  どんなに完璧にプログラムされた世界でも、

  所詮それは後から作り出された世界。

 

  完全に人間は縛れない。

  

  人は・・・必ず何かしら方法を見つけ出す。

  規制を破り、新たな世界を獲得するために。」

 

 

 「僕達ルーラーも人間・・・神にはなれない・・・か。

 リストは視線を落とし、無表情に床を眺める。

 

 「あ!

  ご、ゴメンなさい(;´Д`)

  別に批判したわけじゃないんです。」

 

 『ハハハ、人間の可能性の証明か。

  俺達がグリードアイランドを創ったのも無駄じゃなかったな。

 

 床を見つめる目を細くするリスト・・・。

 

 「・・・フフフ、

  確かに。

  全く予想してなかった展開ですけど、なんか・・・嬉しいですね。

  製作者のひとりとして。

 

 ホッ、怒ってない(;´ー`)

 

 「で、

  お願いなんですけど、

  そのプレイヤーには今後も干渉しないであげてほしいんです。

  ゆっくりと見守ってあげて下さい。」

 

 「もちろん!

  あーーー、なんか制作意欲湧いてきたなぁ。

  うずうずしますね。

 

 「じゃぁ俺のイベントも追加しようぜ!

 

 「・・・

 

 

 「おい! 無視するなよ!

  なんか反応しろよ!

 

 

 『まだまだグリードアイランドはいいゲームになりそうだ。

 

  さぁルルーペ、出発だ。

 

 「うん、わかった!

  行こうNGLに! カイトに会い、そしてネテロ会長に若返り薬を届ける!」

 

 

 『じゃあ私とイータの出番ね。

  カイトくんの元に飛ばすわよ。

 

 『では! いきます!

  始点ルルーペ! 終点カイト! 移動体ルルーペ!

  

  始点・・・検索!・・・座標確認!

  

  終点・・・検索!・・・

 

 

 これからカイトという人物に会う。

 

 ジンの弟子・・・どんな人だろう。

 

 話を聞く限り、危険な人じゃなさそうだけど。

 

 もし第一通報チームのカイトとネテロ会長が合流してたら、いきなり任務完了ってこともありえるかも。

 

 

 

 

 

 ・・・。

 

 

 

 

 「・・・どうした? イータ?

 

 

 

 『・・・

 

  ・・・そんな・・

 

 

 『イータ?

 

 

 『・・・終点・・・

  

  確認できません。

 

 

 「え?」

 

 

 『イータ・・・

 

 

 『こ、こんなこと・・・

  言いたくないけど・・・

 

  いないのよ・・・どこにも・・・

 

  カイトくんは・・・

 

  すでに・・・・・死亡しています・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第13章 「エピローグ・・・そして」

 

 

 

 

 

 

 

 ついに舞台はNGLへ! キメラアント編突入!!!

 カイトの死、ルルーペの移動先は!? いきなりの波乱!

 第14章「運命の出会い」 スタート!

  next  ストーキング78「旅立ち」の巻 絶対見ろよな!ъ( ゚ー^)

 

 

  

  

 

  

 

  

 

 

 

 

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